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【もう熱中症予防!?】『暑熱順化』で暑さに備えよう!(安全ミニ通信296号)

更新日: 安全ミニ通信
夏が近づくと、「水分補給をこまめに」といった注意喚起をよく耳にします。
しかし、毎年のように熱中症による搬送者・死亡者は後を絶ちません。職場でも、気づいたときには本人が意識がもうろうとしていた、というケースも少なくないのが現実です。
とくに屋外作業や、高温環境での作業に携わるスタッフの皆さんにとって、熱中症はもっとも身近な労働災害のひとつです。安全担当者にとっても、「熱中症は防げる災害である」一方で、対策が不十分だと一気に重篤化してしまう厄介なリスクといえます。
今回のテーマは、熱中症対策として近年注目されている「暑熱順化(しょねつじゅんか)」。
水分補給や休憩だけでは守り切れない“体の準備”について、「現場で実践できる形)で整理していきます。
 
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  「暑熱順化」とは?熱中症予防の鍵を握る体の変化

1.熱中症は“暑くなり始め”が危ない

「まだ本格的な真夏日じゃないから大丈夫」と油断しがちな、初夏〜梅雨明け前。
実は、職場の熱中症は“暑くなり始めの時期”に集中しやすいことが分かっています。
理由はシンプルで、体がまだ暑さに慣れていないからです。
急に気温・湿度が上がると、体はうまく熱を逃がせず、体温が上昇。気づかないうちに脱水が進み、「だるい」「頭が痛い」「めまいがする」といった症状から、最悪の場合は意識障害にまで至ります

2.「暑熱順化」ができている体・できていない体

暑熱順化のポイントは汗をかくことです。
汗をかく力を高めることで、体の中の熱を効率よく外へ逃がせるようになり、熱中症になりにくい体に近づきます
暑熱順化ができていない状態
• 汗が出にくく、体から熱が逃げにくい
• 体温が上昇しやすい
暑熱順化ができている状態
• 汗が早く出るようになり、体から熱が逃げやすい
• 体温が上昇しにくい
つまり暑熱順化ができているかどうかは、同じ環境で同じ作業をしても、熱中症リスクが大きく変わるということです

3.「自分は大丈夫」が一番危ない

現場では、「毎年暑い現場で働いているから慣れている」「若いから平気」といった自己判断も起こりがちです。
しかし、暑熱順化は数日〜2週間程度の“積み重ね”が必要とされており、毎年リセットされます。
•長期休暇明け
•配置換えで暑いエリアに入るとき
•在宅勤務や事務作業が多かった後の現場復帰
こうしたタイミングでは、年齢や経験に関係なく、誰もが「暑さに弱い状態」からスタートすると考えたほうが安全です。“ベテランほど危ない”こともある、という意識を共有しておきたいところです

  暑熱順化トレーニングの具体例
では、どうやって暑熱順化を進めていけばよいのでしょうか。
特別な道具を使わずに日常生活の中で取り入れやすいトレーニング例を紹介します

1.歩く・走る

•帰宅時に一駅分歩くなど、無理のない範囲で
•歩く目安:30分
•走る目安:15分
•頻度目安:週5回
長時間のランニングを急に始める必要はありません。
普段より少しだけ歩く距離を増やすなど、「息が弾むけれど会話ができる程度」の強度からスタートすると続けやすくなります

2.自転車

•速度は出しすぎず、普段通りのペースで
•運動目安:30分
•頻度目安:週3回
通勤や買い物の移動を、自転車に置き換えるのも有効です。
がんばってスピードを出すより、「じんわり汗をかく」程度を目指したほうが安全です

3.室内での筋トレ・ストレッチ

•室内でできる軽い筋トレやストレッチなど
•運動目安:30分
•頻度目安:週3回
天候に左右されず、自宅でも取り組める方法です。
スクワットや腕立て伏せ、ラジオ体操、軽いエクササイズ動画なども立派な暑熱順化トレーニングになります

4.入浴(湯船につかる)

•シャワーだけでなく、湯船につかる
•頻度目安:2日に1回〜毎日
ぬるめのお湯(目安:38〜40℃程度)にゆっくりつかることで、体を温めつつ、汗をかく力を高められます。
仕事で疲れている日ほどシャワーで済ませがちですが、短時間でも湯船に浸かる習慣が、暑さに強い体づくりにつながります。
 
  今日からでできる「暑熱順化×熱中症予防」
ここからは、現場スタッフと安全管理担当者の両方に向けて、すぐに実践できる具体的なアクションを整理します。

1.個人でできる習慣づくり

1)いきなり頑張らない——“できる範囲”からスタート
「まずは目安を気にせず、できる範囲で行うこと」
急に「毎日30分走る」などと決めると、ケガや体調不良の原因にもなります。
•最初の1週間は「10〜15分歩く」だけでもOK
•「少し汗ばむ」「ちょっと心拍数が上がる」程度を目安に
2)トレーニング前後の水分・塩分補給を徹底
暑熱順化のための運動も、やり方を誤れば熱中症を招きます。トレーニングの前後に水分・塩分補給を忘れないことが重要です。
•運動前にコップ1杯の水
•運動中も喉が渇く前に少しずつ
•発汗が多いときは、経口補水液や塩分タブレットも活用
3)「少しでも体調が変」と思ったら中止
•頭痛、吐き気、めまい、動悸
•いつもより強いだるさ、食欲不振
こうしたサインが出たときは、必ず無理をせず中断し、涼しい場所で休みましょう。「体調が優れないときは必ず無理をしないこと」が重要です。

2.現場・企業側でできる仕組みづくり

1)「暑熱順化期間」を公式に設定する
•暑くなり始める時期〜真夏に入る前の2週間程度を「暑熱順化期間」として明示
•この期間は、重作業を急に詰め込まないよう、シフトや作業計画を調整
•新人・久々の現場復帰者・高齢者には、とくに段階的に負荷を上げる
2)朝礼・掲示で「暑熱順化」の重要性を共有
「水分補給」「休憩」の注意喚起に加えて、以下のようなメッセージを掲示・周知するのがおすすめです。
•  「暑熱順化には数日〜2週間かかります」
• 「長期休暇明け・部署異動直後は要注意」
• 「無理せず、自分のペースで日々運動」
3)環境整備:涼める場所と水分補給の確保
暑熱順化を進めていても、環境対策は必須です。
•日陰・空調の効いた休憩所の確保
•冷却グッズ(保冷剤、冷感タオルなど)の配備
•すぐ手に取れる位置に飲料(できれば水とスポーツドリンクの両方)
4)“声かけ文化”をつくる
熱中症は、自覚症状が出にくいケースもあります。周囲の小さな違和感に気づけるような文化づくりが重要です。
•顔色が悪い、汗が極端に少ない/多い
•ぼんやりしている、動きが遅い
•同じ失敗を繰り返す など
こうした変化に気づいたら、遠慮なく声をかける・休憩を提案することをルールとして明文化しておくと、「言いづらいから我慢する」空気を減らせます

3.「暑熱順化できた後」も継続がカギ

「暑熱順化できた後もトレーニングは継続すること」が大切です。
一度暑さに慣れても、運動量が減ったり、涼しい環境で過ごす日が続くと、体は元の“暑さに弱い状態”に戻っていきます。
•週に数回の軽い運動
•毎日の湯船習慣
•休み明けは負荷を少し下げて再スタート
こうした小さな積み重ねが、「倒れにくい現場」を支える土台になります

 

  まとめ——無理をしない暑熱順化で、無事故の夏を
この記事でお伝えしたポイントを振り返ります。
•熱中症は「暑くなり始め」の時期ほど危険で、暑さに慣れていないことが大きな原因
•暑熱順化ができていると、汗が早く出て体から熱が逃げやすくなり、体温が上がりにくくなる
•暑熱順化には数日〜2週間程度かかるため、早めの準備と「無理をしない継続」が重要
•日常の中でできるトレーニング(歩く・自転車・室内運動・入浴)を、自分のペースで取り入れる
•現場・企業側は、「暑熱順化期間」の設定、環境整備、声かけ文化などで、仕組みとして守る体制をつくる。


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